実験中に飛沫する溶媒や試薬などから目を守るために、保護メガネの着用は必須です。
実験者にとって重要な保護メガネですが、どんな種類が市場に出回っているのか、よく知らない人も多いかと思います。そこで本記事では、実験者が正しい保護メガネの知識を得て安全に実験をできるようになるために、用途の応じた保護メガネの種類の選び方を説明します!
結論
- 薬品を扱う作業
保護メガネの形状:スペクタル形 (サイドシールド付き) or ゴーグル形
保護メガネの素材:CR39 or 強化ガラス - 粉体・粉塵を扱う作業
保護メガネの形状:スペクタル形 (サイドシールド付き) or ゴーグル形
保護メガネの素材:セルロースアセテート - レーザー・赤外線・紫外線を扱う作業
保護メガネの形状:スペクタル形 (サイドシールド付き) or ゴーグル形
保護メガネの素材:ポリカーボネート - 機械・切削などの作業
保護メガネの形状:スペクタル形 (サイドシールド付き) or フロント形
保護メガネの素材:ポリカーボネート
保護メガネの種類
保護メガネを選ぶ上で大事なのは、「形状」と「レンズの素材」です。それぞれ詳しくみていきましょう。
形状
保護メガネの形状は、日本工業規格 (JIS) によって規格が定められています。①フロント形、②スペクタル形、③ゴーグル形の3つの形状があります。
また、レンズの形状は一眼式・二眼式が2種類が存在します。下の図を参照してください。
形状ごとの特徴は以下の通りです。
ゴーグル形が最もバリア性が高く、丈夫です。しかし、バリア性・丈夫さが優れている一方で、着脱はしづらく、保護メガネの内側が曇りやすいというデメリットがあります。また、レンズの形状については、二眼式のほうがバリア性が高く丈夫です。
”バリア性・丈夫さ”と”着脱しやすさ・曇りにくさ”はトレードオフの関係にあります。
形状ごとの特徴をまとめると…
- ゴーグル形はバリア性や丈夫さに優れ、危険な作業での着用に適する
- フロント形やスペクタル形は着脱しやすさや曇りにくさに優れ使いやすいため、危険性の低い作業での着用がオススメ
- レンズ形状については一眼式の方がバリア性が高く丈夫。また、メガネの上から保護メガネを着用することが可能
レンズの素材
主なレンズの素材は以下の4つです。特徴を表にまとめました。
素材 | 特徴 | 表面加工 | 防護対象 |
---|---|---|---|
ポリカーボネート | 軽量 耐衝撃性 遮光性 | 曇り止め ハードコート | 衝撃の大きい飛来物 |
セルロースアセテート | 軽量 | 曇り止め | 粉塵、衝撃の小さい飛来物 |
CR39 | 耐衝撃性 耐薬品性 耐摩耗性 | ウルトラハードコート | 衝撃の小さい飛来物、薬品 |
強化ガラス | 耐薬品性 耐熱性 | 加工なし | 薬品、熱 |
”ハードコート”、”ウルトラハードコート”とは、表面を傷つきにくくしたり汚れがつきにくくするためのコーティング処理のことです。
- ポリカーボネート
耐衝撃性が高く、衝撃の大きい飛来物から目を守ります。また、遮光性に優れるためレーザー用保護メガネとして普及しています。曇り止めやハードコートされているものが多く、使いやすい素材といえます。 - セルロースアセテート
粉塵や衝撃の小さい飛来物の使用に適します。 - CR39
耐衝撃性、耐薬品性、耐摩耗性に優れ、衝撃の小さい飛来物や薬品を扱う作業に適しています。また、表面をウルトラハードコートしたものは、保護メガネの中でも最も傷つきにくいレンズとなります。 - 強化ガラス
耐薬品性、耐熱性に優れており、薬品や熱を扱う作業に適します。衝撃にはあまり強くありません。
用途別 オススメの保護メガネの種類
機械操作や切削などの重作業
保護メガネの形状:スペクタル形 (サイドシールド付き) or フロント形
保護メガネの素材:ポリカーボネート
機械操作や切削などの重作業では、ゴーグル形のように目の周りを密閉する必要はないので、スペクタル形やフロント形を選んで大丈夫です。重作業は金属片などの衝撃エネルギーの大きい飛来物が飛んでくる危険性があります。そのため、衝撃に強いポリカーボネート製の保護メガネがオススメです。
粉体・粉塵
保護メガネの形状:スペクタル形 (サイドシールド付き) or ゴーグル形
保護メガネの素材:セルロースアセテート
粉塵が発生する作業では、隙間から粉塵が目に入らないように、バリア性の高いゴーグル形やスペクタル形がオススメです。軽くて曇り止めにより視界を確保しやすいセルロースアセテート製の保護メガネを選びましょう。
薬品
保護メガネの形状:スペクタル形 (サイドシールド付き) or ゴーグル形
保護メガネの素材:CR39 or 強化ガラス
薬品を扱う作業では、目の付近の高いバリア性が求められるため、ゴーグル形やスペクタル形がオススメです。耐薬品性に優れるCR39もしくは強化ガラス製の保護メガネを選びましょう。
CR39は強酸に対して弱いので、強酸を使う場合は強化ガラスを選びましょう。
一方、強化ガラスは衝撃に弱いので、衝撃物があると想定される場合はCR39を選びましょう。
レーザー、赤外線、紫外線
保護メガネの形状:スペクタル形 (サイドシールド付き) or ゴーグル形
保護メガネの素材:ポリカーボネート
レーザー、赤外線、紫外線などの有害光線を扱う作業では、遮光性に優れるポリカーボネート製の保護メガネを選びましょう。ポリカーボネートはUVカット率99.9 %と優れておりレーザー用保護メガネとして広く使用されています。
まとめ
今回は保護メガネの形状と素材について解説し、用途ごとに適した保護メガネの種類を解説しました。ご自身の作業環境に合った保護メガネを選び、安全に実験や作業をしてください。また、他の記事では保護メガネの曇り止め加工に関する内容を特集していますので、是非ご覧ください。